イチイ木材ってどんな木?種類・特徴・使われる家具などを総まとめ
どのような競技でも、数多くの参加者が努力をし、技を競い合って、研鑽をして、トップを目指していくものです。
木材の世界にも、さまざまなジャンルがありますが、それぞれに、トップに君臨する樹木があります。
ここで触れる木材は「イチイ」。
漢字で書くと「一位」。
まさに、一等賞を獲得した名誉ある樹木が、今回の主役です。
私たちの身の回りにも、広く分布していて、真っ赤な果実を食べた事のある方もいるかもしれません。
もしくは、小さいころにハンカチなどを染色するために、赤い色素を抽出したり。。なんていう記憶がある方もいるでしょう。
イチイ木材は、現在では、木彫材として非常に高い人気を誇る木材です。
その人気ぶりからも、なかなか入手が難しい側面があるほど、高い評価を受けています。
それではイチイの魅力について見ていきましょう。
イチイ木材とはどんな木?
イチイ科に属する針葉樹で、日本国内では、北海道から九州まで、広く分布しています。
主に、山間部に多く自生する木ですが、生垣などに植樹される事もあるので、街中で見かける事も多い樹木と言えるでしょう。
北海道産のイチイは、全般的に高品質で、産地ごとに、固定ファンが分かれるといった特徴を持つ木材のひとつです。
イチイ材の有名な産地としては、他にも岐阜県の位山(くらいやま)があります。
岐阜県の県木が、イチイに指定されているのは、位山(くらいやま)のイチイが産地として広く認識されているからなのです。
世界中の権力者は多くの場合、儀式の際には手に何かしらのアイテムを持っているとされます。
王様が持つセプターであったり、シャーマンが持つワンドであったり、そのアイテムはさまざまです。
中国から伝わった文化で、日本では神事の際に、高官が、手に木の板を持っている事をご存じでしょうか。
手に持つ細長い板の事を笏(しゃく)と呼びます。
もともとは「こつ」と呼んでいたのですが、骨(こつ)と同じ発音である事から、しゃくと呼ぶようになりました。
一説によると、古い時代の日本、仁徳天皇が笏(しゃく)を作らせる際に、さまざまな木材から作らせて、その出来栄えを確認したとされます。
数ある木材の中で、最も美しく、最高の出来栄えであった木材が「イチイ」であったとの事です。
そのために、仁徳天皇は、最も高いランクを示す「正一位」を授与したと言われています。
学名は、Taxus cuspidataで、「イチイ」という名前で取引される樹木はこの一種類のみです。
ただし、産地によって名称が大きく異なりますので、同種別名の名称について記載します。
地域によって。。
- アララギ
- スダオノキ
- 紫松
- 水松
などの呼び方があります。
これらの名前は、樹木としての呼び方である傾向が強く、木材として製材されたものは、「イチイ」の名前で流通する事が多いようです。
イチイ材のことを、北海道では、アイヌ語で「オンコ」と呼びます。
現在でも、「オンコ」の名前で取引される事があり、この名前は、イチイ材と同一の木材だと言えるでしょう。
イチイ材には、変種が多く存在していますが、基本的には品名として確立されていない状況です。
もちろん、樹木の名前としては、定義付けられていますが、木材として流通する際には、イチイの名前で取引される事が多いようです。
イチイ木材はどんな特徴があるの?
気乾比重は約0.45~0.60です。
産地によって、木材の性質に、違いが出る事があります。
比較的小ぶりの樹木として知られるイチイ材ですが、北海道に生息するイチイ材は、本州に比べると大きく育つとされています。
辺材は白色、心材は紅褐色で、辺材と心材の境界は明瞭ではっきりと分かれています。
心材の赤系の色合いからは、さまざまな染色に適した色素が抽出できます。
製材を施した心材部分のおが屑は、草木染めの材料として、取引されることもあります。
イチイ木材は、針葉樹としては非常に堅い木として知られます。
しかし、乾燥性の良さ、保存性の良さからも非常に扱いやすい木材として認識されています。
イチイ木材は、加工性も非常に良く、弾力性に富むために木彫りや、彫刻材としては、最高級の扱いを受ける木材です。
製材直後のイチイ材は、明るいオレンジ色に近い色合いですが、時間の経過とともに飴色に変化していきます。
イチイ材を用いた製品に関しても、飴色への変化を基本とした経年変化をしていくとされます。
イチイ材は、乾性油を用いたメンテナンスによく反応する木材と言えるでしょう。
イチイ木材はどんな家具に使われているの?
仏壇や経机などの仏具や、日本家屋の生活に即した和家具として、古くから用いられてきました。
建材としても用いられる事があり、床柱や落掛などに利用されます。
イチイ材の表情や、色合いは、日本人の好みに合致していて、茶筒やお盆、木製茶碗などにも利用された歴史があります。
また、彫刻材としては、加工性が彫刻に適している事から珍重されます。
他には。。
- 櫛(くし)
- 簪(かんざし)
といった装飾具にも多く利用され、ツゲやイスノキなどと並んで、多くの製品が残されています。
イチイ材は、日本の木材としては、珍しく、鉛筆の材料にも使われています。
経年変化で、飴色によることから、髪の油との親和性が高く、この点で、ツゲと似た性質が人気の秘訣であった事がうかがえます。
イチイ材を用いた彫刻物は、ブランド品としての価値も高く、アイヌの熊の木彫りや、岐阜高山(たかやま)の一刀彫りなどが知られています。
イチイ材と同じように古くから、櫛(くし)などに使われていた木材に「イスノキ」という木があります。
こちらの記事には、「イスノキ木材」についての記事もあります~
是非、この機会にご一緒にお読みください。
イスノキ木材についての面白い記事もあります~⇩
イチイ木材についてのまとめ
日本語で固有名詞を持つ木材は多数ありますが、その名前が最高ランクを意味する一位「イチイ」です。
まさに、イチイ材は、木材としてもトップクラスの優良材として申し分のない木材と言えます。
スベスベとした肌目に赤みのかかった色合いが、非常に美しい木材です。
高級材に含まれる木材ですので、あまり、一般的な店舗で見かける事はないかもしれません。
しかし、ひとたびイチイに魅了されたならば、イチイの熱狂的なファンになってしまう可能性もあります。
それほど、木材としての魅力に詰まった木材がイチイなのです。
もし、イチイ材を見かけることがあったなら、ぜひ、その肌触りと、木目の織り成す表情を楽しんでみてください。