楠(クスノキ)木材ってどんな木?種類・特徴・用途・価格などを総まとめ

2022年11月17日

日本には、様々な苗字がありますが、「楠」「楠木」(くすのき)さんという苗字の方をご存知の方もいるかと思います。

とても、多い苗字ではありませんが、非常に珍しい苗字でもなく、読む事もそれほど難しくない苗字ではないでしょうか。

この苗字の由来には、諸説ありますが、実は“楠(くすのき)”という木材があるのです。

楠(クスノキ)という木材は、あまり一般的ではないかもしれません。

しかし「樟脳」という言葉を聞いた事がある方は、まだまだ多いのではないでしょうか。

若い方には馴染みのない「樟脳」ですが、これこそが楠(クスノキ)から抽出された成分そのものなのです。

「樟」の字もクスノキと呼びます。

古くから、家具や仏像に用いる木材として、重宝されていた楠(クスノキ)です。

時代の流れとともに、様々な工業製品にとって、なくてはならない存在となってきました。

ここでは、楠(クスノキ)という木材についてお話を進めていきましょう。

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楠木材ってどんな木?産地など

楠(クスノキ)は、クスノキ科・ニッケイ属という分類になる木材で、非常に大きく育つ事が特徴です。

生息地としては。。

  • 台湾
  • 中国
  • ベトナム

などの温かい地域で、それらの地域から日本に入ってきました。

木材としては、加工がしやすく、水との重さを比べた数値である気乾比重は、約0.52で木材としては、中程度の重さとなります。

防虫性が非常に高く、古くから防虫剤に使われるほど、その防虫性は広く知られていました。

楠(クスノキ)から採れる成分を樟脳と呼び、英語ではカンフルと言います。

樟脳(しょうのう)には、血行促進作用や鎮痛作用、消炎作用があり、「ダメな時に復活させる薬」のような意味合いで使われる“カンフル剤”はクスノキから来ている言葉です。

大きな木材が採れて、高い防虫性を兼ね備えている楠(クスノキ)が使用された歴史は古く、飛鳥時代には、仏像材として使用されていました。

その後、樟脳(しょうのう)がとして用いられるようになり、日本国内でも多くが植樹されました。

外貨獲得の手段として、輸出品目の上位にくるほど高い人気があったそうです。

近代に入ってからは、楠(クスノキ)は、セルロイドを作る際の添加物として、工業的に多く用いられましたが、プラスチックの登場によって、使用頻度は極端に減った経緯があります。

樟脳(しょうのう)の鮮烈な香りも、最近ではむしろ、苦手だと感じる方が多くなり、香木としての人気もめっきり落ちてしまいました。

そのような長い歴史を持つ楠(くすのき)ですが、巨木かつ長生きという特質は、木材としての評価価値が高さを残したといえます。

楠(くすのき)材は、瘤材(こぶざい)という独特な表情をもつ材が多くとれるため、観賞的価値の高い木材になります。

 

瘤材(こぶざい)って何?

瘤材とは、落雷、山火事、雪害、突風などの気象的要因や熊の爪とぎ、昆虫、キツツキなどの部分的要因、木の病気などの内部的要因、挿し木、接ぎ木、弓矢、鉄砲、猟などの人為的要因・・などいろいろな原因によって、樹皮の一部が巻き込む形で形成されたものが、瘤(こぶ)といいます。

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楠(クスノキ)材には種類はあるの?

春の時期に、全体的に赤く見えるクスをアカグス、青く見えるクスをアオグスと呼ぶ事はありますが、厳密な木材の種類としての区別ではありません。

木材としては、通常の楠(クスノキ)材と、楠(クスノキ)瘤材(こぶざい)の区別が一般的かと思います。

楠(クスノキ)の表皮がゴツゴツと瘤(こぶ)のように変異したものを瘤材(こぶざい)と言い、それらを製材した場合には、瘤杢(こぶもく)と呼ばれる事もあります。

楠(クスノキ)瘤は、その独特な表情から、収集家の方が多くいる人気の品物になります。

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楠(クスノキ)材はどんな特徴があるの?

楠(クスノキ)木材は、枝分かれが多く、大きく育つ事が特徴です。

成長して大きくなった楠(クスノキ)は、表皮が入り組むように変異をして、特徴的な瘤(こぶ)を作る事が多い樹木です。

ゴツゴツとした野性味溢れる表情は、一枚板として用いられる事もあります。

 楠(クスノキ)一枚板

また、瘤の部分を製材した場合には、玉杢と呼ばれる独特な木目の表情を生み出す板として、扱われる事があります。

玉杢は、杢材の中でも非常に人気の高い物で、楠(クスノキ)瘤と並んで、杢クスノキといった商品名で取引される事もあります。

辺材は、白っぽい色から黄褐色、心材は、紅色から暗赤色のように、大きなコントラストを持つ木材ですので、辺材と心材の境界線を持つ源平材も、非常に高い人気を誇る板となります。

楠(クスノキ)材は、加工がしやすく、扱いやすい事から、家具材などにも、高い人気がありましたが、樟脳の強烈なにおいがする為に、通常の板としての流通量は減ってきたとも言えます。

  • 樟脳(しょうのう)

 

楠(クスノキ)材の価格はいくらくらいするの?

楠(クスノキ)材の板は、樟脳のにおいが強く、最近では取引される前に、臭いを消してから出荷される事が多い木材です。

しかし、板としては、消臭処理を行って、利益が出せるほどの価格とはなりません。

つまり、樟脳のにおいが商業的に悪影響を及ぼしてしまったとも言えます。

ただし、杢材に関しては価格が高くなりますので、消臭処理を行って、一枚板として流通する事があります。

杢材は、価格もピンキリと言わざるを得ません。

楠(クスノキ)の瘤杢の板を使用した大きめのテーブルですと、オーダーメイドで50万円から100万円程度で取引される事が多いようです。

 

楠(クスノキ)材はどんな用途に使われているの?

古くは仏像を作るために用いた木材として重宝されてきました。

その防虫性や防朽性は高く評価され、家具材としても使われてきた歴史があります。

また、防水性も高く、船の材料としても用いられてきました。
丸太船の材料として用いられてきた歴史もあり、古墳時代の地層から出土するほど、古くから船の材料として用いられてきました。

また、造作材や彫刻材としても用いられてきましたが、現在では、もっと安価で加工や入手のしやすい木材がありますので、その人気はあまり高いとは言えません。

現在では、楠(クスノキ)の一枚板を用いたテーブルや衝立として使用される事がありますが、先ほど述べたとおり樟脳のにおいが問題となる事があります。

樟脳(しょうのう)のにおいは、好みが大きくわかれる物で、残念ながら現在ではあまり好まれないようです。

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楠(クスノキ)材についてのまとめ

昔の家屋にあったようなタンスや引き出しを開けると、フワッと独特のにおいがあったものです。

あのにおいが樟脳(しょうのう)のにおいです。

とは言っても、最近の方はご存知ない方も多いかもしれません。
においと共に懐かしい思い出が蘇る、という事はよくあります。

楠(クスノキ)木材は、日本人にとって、においとともに記憶されている木材と言えるでしょう。

もしも、楠(クスノキ)の板を見かけた時には、その香りもぜひ楽しんでみてください。

昔は、その香りが日常に溶け込んでいた事。
人々の暮らしと共にあった事。
楠(クスノキ)木材は、私たちに大事な何かを思い出させるきっかけの一つとなるかもしれません。

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木材

Posted by MOhkubo